禁酒令

月一の検診で指摘されたのは「中性脂肪」。飲み過ぎに運動不足、肥満を言われ「ごもっとも」とすべて納得。膵臓傷害を脅され相づちを打つはめに。

「酒もろうた、温めてあるから一杯せい。イヤおれはちと願があって三年禁酒した。これは心もとない合点がゆかぬ。ハテきびしく飲まぬところを見て、おきやれと言って帰る。次の夜皆飲んで居るところへ、酒飲みに来たと言ってくる。亭主もあきれて、それ見やれ、きのうの事もう破るか。やぶりはせぬが、おれも発明を出して三年の禁酒を六年にして夜ばかり飲むつもりじゃ。これも尤もじゃが、とてものこと十二年にして昼夜飲みやがれ」

ツラツラ考えるに禁酒は出来ぬ。ならば今日から酎ハイ一本、酒一杯と決め固く守ってみよう。

「わが禁酒破れ衣となりにけり さしてもらうはついでもらうは」

月曜は客の入りが少ない。数時間待ちさては◯(ボウズ)かと想いきや一人の酔漢登場。「家飲み分を減らせば」と更なる客の入りを期待し「ゲンかつぎ」の一杯。
浴後は酎ハイだけのはずが、TVで「ロケットマン」の演説。
「ええぃ 禁酒は明日から‼」
翌日夜は誕生会で高度に盛り上がり、衣は破れっぱなし。「準備期間」としておこう。

落語と酒 別冊サライ 小学館