寛政(1800年頃)の酒仙 亀田鵬斎

亀田鵬斎は江戸時代の学者だが、詩人でもある。自ら「関東の狂生」と号したように豪放で奇行が多かったが、器量は高く評価された。

彼の詩に江月(こうげつ)がある。(漢文略)

満江の名月 満天の秋  一色の江天 万里の流  半夜 酒醒めて 人見えず  霜風 蕭瑟(しょうしつ)たり 荻盧洲(てきろしゅう)

いっぱいに名月の光がはえ、夜空は澄わたり秋の気に包まれている。空と川との色は一色に染められて区別がなく、万里の果てへと流れていく。さて、この夜半に酔いが醒めてみると、あたりに人影もなく、霜をわたるものさびしい風が、おぎあしの生い茂った中洲を吹きわたるだけである。

  • [秋の名月の下、隅田川のほとりで酒を飲み、夜半、目覚めた時の、川原を吹きわたる秋風に興趣をおぼえうたったものである。(石川忠久)]

漢詩をよむ 石川忠久 日本放送出版協会

宮仕えせず下町の儒者で終わった鵬斎の奇行ぶりは次号で。