中国皇帝と妃の二日酔い

醒酒草(玄宗皇帝685-762年)
玄宗皇帝が楊貴妃と華清宮に行幸した折りのこと、二日酔いがようやく醒めかけたところで、妃子(きさき)の肩に寄りかかって、一緒に木杓薬(牡丹)を看ていた。帝は親(みずか)ら一枝手折って、妃子と交(かわ)る交(が)わるその艶(なまめ)かしい香りを嗅ぎながら、帝が曰う「萱草(かんぞう)※が憂いを忘れさせるばかりでなく、この花の艶(なまめ)いた香りは最もよく酒を醒す」と。
※萱草は和名かんぞう。この草は人をして憂を忘れしめると言い伝えて、一名に忘憂草という。

酔いざましに花の露(楊貴妃719-756年)
楊貴妃は毎(つね)に二日酔いが醒めかけると、多く肺の熱に苦しんだ。かって朝早く一人で後苑に遊び、花の樹に近づき、手で枝を攀(よ)じて、口で露を吸い、その露の液(しる)を借りて肺を潤した。

酒中趣 青木正児 筑摩叢書